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目次 1桜吹雪   2 四季即是食う 食う即絶食  3 池田晶子レクイエム  4 はやぶさ帰還

詩を教えることについて  5 やなせ たかし さんの問いかけに答えて    HPトップ   
 桜吹雪
aaaa桜吹雪
            aa鈴木洋純

aa桜吹雪に見るべきは

aaこの世の「無常」ときまっているが…

aaそんな感じがするだけで

aaほんとは何も見ていない



aaだから、かしこい人たちは

aa桜吹雪なんて興味なし

aa満開の桜にかこつけて

aa飲めや歌えの狂い咲き

aa花よりビール」

aa「花より焼肉」

aa「花よりカラオケ」

aa格言を大いに盛り上げのりまくる



aa桜吹雪に

aa「見るべき」は

aa紋きり観念 思考の停止



aa桜吹雪に

aa「なすべき」は

aa発想の逆立ち へそ曲がり



aa桜吹雪になすべきは

aaおのれがまなこで見るということ



            05年4月15日

* 今年の桜、土日満開なれば見ること能はず。盛り過ぎたる花の下を歩む。「無常」なる存在の根本法則も、己が真実の実感を得ぬ限り、其は単なる先入観念。我欲する所は、知識、情報の受動に在らず。見るといふ実践の主体たらむことなり。05年4月15日

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四季即是食う 

四季即是食う 食う即絶食(シキソクゼクウ クウソクゼッショク)     歴史時事問題特別授業

              −短い叙事詩の試み−

その国は豊かになった

その前は戦争に負けてどん底だった

でもちょっと豊かになると、そんなことはすぐに忘れた

自分たちはセカチュウだと思い始めた

こういう変な言葉を変な言葉だとも思わなくなった

 

その国の食料自給率は30パーセントなのに

人々は毎日ご馳走を食べていた。

わざわざやせるための努力をする人もたくさんいた

太った後にやせるとたたえられさえした

最初から太らないような生活をすることは許されなかった

なんてったって、国営テレビまでグルメをたたえ、グルメを勧める番組を放映するのだから

 

その国の有名人とは、珍しい食べ物を毒見するかのような表情で食べてみて、何かコメントする人のことだ

まずいというコメントはなぜか聴いたことがない

その国の有名人とは何でも食べる雑食性の極み(きわみ)にいる人のことのようだ

彼らの語彙(ごい)は十語に満たない

 

その国の挨拶言葉は「ダイエット」だった

ダイエット関係の健康()産業が隆盛になり、GDPは引き上げられた

そういうGDPにどんな意味があるの?

だって実質的な生産性がないじゃない

それってもしかしたらバーチャルGDP

そんな素朴な疑問は蚊の鳴き声のようなものだった

 

ところで 牛も豚も鶏も、栄養満点のご馳走を食べて 自分の運命を知らない

その国では、人々も家畜になっていった

自分たちがどうしてそんなに豊かな生活ができるのかは考えなくなった

今を何とかしようとか、

これからどうなるのかなんて 考えなくなった

山野のけものは日々生きることを考えるだろうが、家畜はそんなことは考えない

 

時間とは、学校へ行く時間、会社へ行く時間、恋人と待ち合わせる時間、

世界や宇宙のダイナミズムに内在する時間ではなくなった。

家畜にえさが与えられる時間と同じになった

今が歴史の一こまに過ぎないという認識はなくなった

 

空間とは、世界や宇宙の広がりではなくなった

自分たちの世界と貧しい人たちの住む世界とは別世界だと思うようになった

家畜にとって家畜小屋がすべてであるように

世界中を旅行しても、自分の空間はいつも持ち歩いた

ケータイとGPS

 

思考は停止した  ただ感じるだけ

歴史は止まらないのに 歴史観は停止した

 

政治はちょっとハンサムで誠実そうな人にまる投げで任すことにした

なんたって、その人は「美しい国」をつくりたいというのだから

「美しい国」???

そんな当り前のこと言うまでもないことでしょう、と批判する人は無視された

いや 警戒されるようになった

 

みんなは言った

そんな人は、とんでもなく危ない人ですよ

そんなことを言う人はテロリストに決まっていますよ

そういう人には監視カメラと自警団で対処しましょう

 

人々は、数十年前の祖父や曽祖父の時代とおなじ道を歩んだ

歴史はみごとに繰り返した

 

色即是空 空即是色

天は 何事もなかったかのように無言で繰り返していた



 

2007/07/06  by鈴木洋純

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ikeda
池田晶子レクイエム
    ―もうこの世にいない君へ






君は現代のドンキホーテだな

現代社会に対し

勝ち目のない戦いを何と果敢に挑んでいることか




精魂こめて、若者に語りかけようとする君の言葉には

君という人間の全存在がかかっている



ああ、しかし、なんと痛々しいことか

君の呼びかけを真に理解する若者が何人いるのだろうか



君の本は、情報化され、だから、みんなが買う

それは君の生活の支えとなる

君はそんなことに負い目を感じる必要はない



しかし、君の本を買った若者たちは、君の本に書いてあることを、君と同じ真剣さでは受け止めない

それに、そもそも書いてあることの意味が分からない

わかろうと努力することもしない

一見読んでいるように見えても読んではいない



せいぜい頭のよいヤツが、

「この人の考え方はこうこうしかじかで、このあたりが入試に出るよ」とこざかしく情報化するだけだ

そういうヤツは

「この人の考え方もわからなくはないけれどね… でも、まあ、こんなことばかり考えていたら、現実には生けていけないよ」

と物分かりのよさそうなことをしゃあしゃあとぬかすだろう



人間の世界はソクラテスの昔からずっとそんなものであったのだ

しかし、僕はニヒリズムをもちだすつもりはない

そんな世界であれ

君という一点にはかけがえのない存在価値がある、と言いたいだけなのだ

君の生きざまは「真の考える人間たる証」であったのだから


君はソクラテスの末裔、その正当な後継者



真実の星よ

永久に輝け


2009/05/24  by鈴木洋純

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hayabusa 

はやぶさ帰還


        鈴木洋純




テロリストよ

お前らにはわかるまい



政治屋よ

お前なんかにはわかるまい



守銭奴よ

お前らにもわかるまい



人が なぜ はやぶさをイトカワに送り

なぜ あれほどまでの努力をして帰還させたのか



それを知るのは

おさない心が星空になってしまったもの

星雲のかざぐるまに子守唄を聞くもの

夜空のどこかにふるさとを感じるもの



人はなぜ宇宙にあるのか?

人は何のために生きるのか?

人のなすべきことは何なのか?



根源の問いの答えを垣間見せてくれた

はやぶさの帰還



 2010/06/30  by鈴木洋純

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やなせさん
 かまくら春秋社「詩とファンタジー」秋栞号・24号に掲載された「やなせたかし」さんの巻頭詩の最終行の「ところであなたは?」という問いかけに答えてみました。12歳の中学受験生の答を想定しました。詩は同誌を購入の上、お読みください。

私は「これが最後とおもって」とか、「死ぬ時も未熟のままでかえってよかったような気がします」とかいう言葉には、正直言って、実感が持てません。私の前には大きな未来が広がっており、何でもできそうな気がするからです。しかし、やなせさんの言葉にうそはないように思います。やなせさんは人生の最後の地点に立ち、ご自分の人生を振り返って、ご自分の真実を発見されたのでしょう。とすれば、「ところであなたは?」という問いかけは、まだ人生の出発点に立っており、これからようやく人生の歩みを始めようとしている私に対しては、「あなたは、これからのあなたの人生をどのように生きるつもりですか」という問いかけになるでしょう。そして、こう問いかけられるやなせさんは、あのにこやかな笑顔と優しいまなざしで、「あなたは、あなた自身の真実を発見するために、あなたの人生を一生懸命に生きてください」と願っていてくださるのではないでしょうか。やなせさん、ありがとうございます。胸が熱くなります。私もやなせさんの言葉の意味が本当に分かるように一生懸命生きていこうと思います。


2013/10/30  by鈴木洋純

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